2020年のCOVIDパンデミック以降、世界のハイテク株が急上昇したことで注目を集めました。
日本でも様々なハイテク株に投資する投資信託が組成されました。
当ブログでも有名なものを取り上げてきました。
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今回はハイテク系のテーマの中でも最も注目度が高いAI関連銘柄に投資している「グローバルAIファンド」について取り上げます。
「グローバルAIファンド」はコロナショックで株式市場が暴落した2020年3月から2020年末までに基準価格を3倍にした時流に乗った評判の投資信託です。
当ブログでは様々な投資信託を分析してきましたが、グローバルAIファンドの2020年の成績は群を抜いておりますね。そして時は2024年。AIブームに熱狂する市場でグローバルAIファンドはどんなパフォーマンスを残しているのでしょうか。
本日はこのファンドに対して主に以下の点をお伝えしていきたいと思います。
今回のポイント
- どのような特徴を持った投資信託なのか?
- AI産業の将来的な可能性
- 為替ヘッジありと無しだとどちらがよいのか?
- 現在2024年の下落要因と今後の見通し
Contents
グローバルAIファンドの特徴とは?
それではまずグローバルAIファンドの特徴について見ていきましょう。
投資対象企業は世界のAI関連企業
名前の通り「グローバルAIファンド」は世界のAI関連企業に投資をする投資信託です。
以下のようなAIの進化や応用によって高い成長が期待される企業の株式に投資を行います。
- ロボティクス
- フィンテック
- IoT
- セキュリティ
- VR
- 自動運転
コラム:拡大するAI関連事業の市場規模
AI関連事業は今後、世界の発展を根底から支えるということもあり市場規模は以下の通り大きく拡大することが予想されています。
事業 | 2025年時点の市場気兆円お |
IoT | 3.9兆〜11.1兆ドル |
モバイルインターネット | 3.7兆〜10.8兆ドル |
知識労働の自動化 | 5.2兆〜6.7兆ドル |
クラウド技術 | 1.7兆〜6.2兆ドル |
先端ロボット | 1.7兆〜4.5兆ドル |
合計 | 16.2兆〜39.3兆ドル |
また、2020年に比べてAI関連企業の売上高は2027年までに12倍になると想定されています。
運用はアリアンツ・グローバル・インベスターズが担当するため手数料が高い
グローバルAIファンドを売り出しているのは三井住友DSアセットマネジメントです。
しかし、実際に運用するのはアリアンツ・グローバル・インベスターズとなっています。
アリアンツは世界最大級の保険会社でグローバルに資産運用業務をおこなっています。
関係者が多くなると手数料が高くなるのは世の常です。グローバルAIファンドの手数料は以下の通りとなっています。
- 購入手数料:3.3%(税込)
- 信託手数料:年率1.925%(税込)
初年度は5%の手数料が発生するということですね。
組入上位業種と組入上位10銘柄
以下は2024年10月末時点の組み入れ業種です。
業種名 | 2024年10月末 | 2024年6月末 | 2024年4月末 | 2023年12月末 | 2023年10月末 | 2023年6月末 | 2023年3月末 | 2022年11月末 |
情報技術 | 51.9% | 58.5% | 56.9% | 62.00% | 57.60% | 52.20% | 57.30% | 52.10% |
一般消費財・サービス | 13.8% | 10.0% | 11.0% | 11.20% | 9.30% | 10.80% | 12.80% | 8.80% |
コミュニケーション・サービス | 6.0% | 11.6% | 12.3% | 9.20% | 11.50% | 13.80% | 15.60% | 11.80% |
ヘルスケア | 8.4% | 7.3% | 6.5% | 8.40% | 8.40% | 9.40% | 6.20% | 8.60% |
⾦融 | 10.4% | 4.8% | 4.7% | 2.00% | 5.30% | 1.90% | 2.30% | 0.50% |
素材 | 0.6% | 0.2% | 1.1% | 1.60% | 1.70% | 2.20% | - | 2.90% |
資本財・サービス | 3.9% | 2.3% | 1.9% | 1.30% | 0.30% | 5.50% | 1.50% | 7.20% |
不動産 | - | - | - | 0.80% | 1.40% | - | - | 0.10% |
エネルギー | - | 1.4% | 2.5% | - | - | - | - | 2.80% |
相変わらず情報技術セクターが58%と突出していますが若干減っていますね。
ただ、この高い情報セクターの比率は2022年はグローバルAIは大暴落だったということを意味します。
2022年はテクノロジー系のグロース企業が暴落していきましたからね。2023年は多少回復しましたが2024年7月に大きく下落しています。
続いてポートフォリオ上位です。上位はNvidia、テスラ、アマゾンと大型テクノロジー株偏重のポートフォリオになっています。
ということはしっかりAIブームに乗っていることがわかります。
テスラは電気自動車バブルとコロナショック起点の金融緩和の掛け算であっという間に株価は暴騰し世界一の時価総額の自動車会社となりました。
しかし、バブルが弾け、金融引き締めが起こった結果、どんどん株価は暴落しました。しかし、トランプ大統領の登場で再び急騰を開始しました。
上記は2024年10月末なので11月末時点だと躍進していることが想定されます。
過去のポートフォリオ上位銘柄の推移は以下です。ロクが1位だった頃があったのですねという感じです。
さすがドットコムバブルの再来です。ほとんどの銘柄が酷いことになっていますね。
こんな感じなので情報通信セクター特化のテーマファンドはリスクがとても高いのです。
2022年11月から2024年6月末までに大幅に銘柄を入れ替えているのが分かりますね。大型テクノロジー株に絞っています。
直近の大きな動きとしてはアルファベットをいきなり構成トップに組み入れていることですね。
2024年10月末 | 2024年6月末 | 2024年4月末 | 2023年12月末 | 2023年10月末 | 2023年6月末 | 2023年3月末 | 2022年11月末時点 | 2022年8月末時点 | 2022年2月末時点 | 2021年6月末時点 | |
1 | エヌビディア | エヌビディア | アルファベット | エヌビディア | エヌビディア | テスラ | エヌビディア | オン・セミコンダクター | テスラ | テスラ | ロク |
2 | マイクロソフト | メタプラットフォームズ | テスラ | テスラ | メタプラットフォーム | アマゾン | マイクロソフト | テスラ | オン・セミコンダクター | ズームインフォ・テクノロジーズ | テスラ |
3 | ブロードコム | ファーストソーラー | メタプラットフォームズ | アマゾン | アマゾン | オン・セミコンダクター | テスラ | マーベル・テクノロジー | スームインフォ | オン・セミコンダクター | アマゾン |
4 | テスラ | テスラ | エヌビディア | ショッピファイ | テスラ | メタ・プラットフォームズ | メタ | ブロードコム | トレードデスク | ブロードコム | アップル |
5 | メタプラットフォーム | ブロードコム | アマゾン | トゥイリオ | マイクロソフト | アドビシステムズ | オンセミコンダクター | ディア | プラグパワー | マーベル・テクノロジー | スナップ |
6 | モルガン・スタンレー | マイクロソフト | ショッピファイ | オン・セミコンダクター | アドビ | ディア | アマゾン | スームインフォ | マーベル・テクノロジー | アマゾン・ドット・コム | GE |
7 | アマゾンドットコム | エラスティック | ファーストソーラー | マーベルテクノロジー | トゥイリオ | トゥイリオ | マーベルテクノロジー | アルベマール | エンフェーズ | ディア | FB |
8 | セールスフォース | アルファベット | サーモフィッシャー | マイクロソフト | アルファベット | ネットフリックス | アリババ | マイクロチップテクノロジー | メタ(旧FB) | シュルンベルジェ | ウォルト |
9 | データドッグ | パロアルト | エラスティック | ブロードコム | ショッピファイ | ショッピファイ | エンフェーズ | エレバンスヘルス | クラウドストライク | フリーポート・マクモラン | ディズニー |
10 | JPモルガンチェース | アストラゼネカ | トゥイリオ | メタプラットフォームズ | オン・セミコンダクター | エレバンスヘルス | ズームインフォ | シュルンベルジェ | ブロードコム | エヌビディア | ブロードコム |
2022年前半に筆頭銘柄だったロクやスナップは今酷いことになっていますね・・・。
スナップは株価が10ドル以下になってしまっています・・・。
バブル崩壊とは恐ろしいものですね。グローバルAIの上位銘柄にはこの二社はもういないものの、暴落時もしばらく保有されていました。基準価額を見れば、よくわかると思います。
<ROKU>
<SNAPチャット>
暴落してしまうような投資対象というのは、毎日投資家は緊張感を持って相場を見張っておく必要があるということです。
毎日相場を見るのは非常に大変で、その努力の上にハイリスク・ハイリターンがあるのです。毎日の観察がリスクを下げます。
しかし、多くの人がグローバルAIのようなハイリスクな投資先に、投資したらしっぱなしという人で溢れていますよね。
そんな方は、相場の観察がそこまで必要ではない、堅実な投資先で運用した方が複利効果も効いて良いのではないでしょうか?
為替ヘッジありを選択するべきか?
グローバルAIファンドは為替ヘッジ有りか為替ヘッジなしを選択することが可能です。
為替ヘッジなしであればドル円レートが上昇するとリターンが増大し、反対に下落するとリターンが悪化します。
2024年5月現在、ドル円は157円となっています。これは日米金利差の拡大に伴ったものです。
しかし、今後は米国の景気後退に伴って米金利が低下することで円高に向かってくるものと思われます。
実際、2024年7月に米景気後退懸念が剥落した上に、日本銀行が利上げを開始して日米金利差が縮小して162円から142円まで一気に円高調整が発生しました。
このトレンドは始まったばかりです。しばらくは円高を警戒して為替ヘッジはつけたほうが賢明でしょう。
ここからは金利差縮小による円高の方がオッズが良いと考えています。つまり為替ヘッジはつけたほうがよいと筆者は考えています。
グローバルAIファンドの運用成績を紐解く!2024年7月に下落した理由とは?
それでは肝心なグローバルAIファンドの成績について見ていきたいと思います。以下はヘッジ無しの成績でみていきます。
グローバルAIファンドは2017年の運用開始後から堅調に推移していきました。
しかし、コロナショック後から明らかに角度を変えて急騰しました。金融緩和時はストーリー株に投資するファンドが強いです。
ROKU、SNAPなどは代表例ですね。
そして金融引き締めが囁かれ出した2021年末からグローバルAIファンドも失速です。
2024年12月現在、2024年7月の下落から回復しているという状況となっています。
2024年7月の下落理由は失業率が上昇しリセッション懸念が台頭して、利確売りが大量に発生したことに起因しています。
現在まで失業率は落ち着いていますが今後急騰するおそれがあります。
更に、日銀が利上げを行ったことでキャリートレードの巻き戻しが発生して世界的にリスクオフになったことも大きく影響しています。
今後、どうなっていくか不安な方は多いのではないでしょうか?(この点は見通しの項目でお伝えします)
ちなみに以下は為替ヘッジなしの成績なので、円安効果でだいぶ暴落が和らいでいることがわかります。本来はもっと暴落しています。
本来の銘柄ピッキングの実力を確認するのであれば、為替ヘッジありを見る必要があります。以下は為替ヘッジありの基準価額の推移です。
通常の為替ヘッジがついてないバージョンがいかに円安の追い風をうけているかわかる結果となっていますね。
かつてはグローバルAIファンドはコロナを機にテクノロジー銘柄のサービスに対する需要が高まり利益が続伸し株価もうなぎのぼりに上げていきました。
以下は米国の代表的な指数であるS&P500指数との比較ですが、2020年のコロナショック後から青色のグローバルAIファンドが圧倒していました。
しかし、2022年以降は大幅に劣後していますね。
青:グローバルAIファンド
赤:S&P500指数(円建)
更に同じようにハイテク銘柄中心に構成されているナスダック100(円建)にも劣後したリターンとなっています。
青:グローバルAIファンド
赤:S&P500(円建)
緑:ナスダック100(円建)
歴史でも類を見ない金融相場であった2020年を加えてもインデックス投資に負け続けているアクティブファンドです。
今後はハイバリュエーション銘柄を多数抱えるグローバルAIファンドのようなアクティブファンドは地獄を見ると思います。
金融政策に左右されない、堅実な運用先を投資家は模索すべきでしょう。
グローバルAIファンドの今後の見通しは?
では、今後の見通しについてみていきたいと思います。
理由①:トランプ大統領の再選でインフレ再燃の懸念が高まっている
2022年に発生したインフレ率は2023年と2024年にかけて下落を続けました。ただ、まだFRBの目標とする2%には達しておらずコラインフレは高い状態を維持しています。
このような中にあってトランプ大統領が再選されました。
トランプ大統領は「移民抑制」「法人減税」「関税強化」という政策を打ち出しており、インフレ再燃の可能性が高まっています。
インフレ再燃となると再び金利が上昇し、グローバルAIファンドが投資をしているハイテク関連銘柄の株価に暗い影を落とすことになります。
理由②:今後は景気後退で株価は軟調に推移することが予想される
今までは金利の上昇によって株価が下落していきました。しかし、これから急激に金利を上昇してきたことにより米国経済は地盤沈下しかかっています。
金利が上昇することで企業が借り入れに億劫になり、事業を拡大することができなくなります。更にインフレによって個人の購買力も減少しています。
今後は企業収益が下落することによりEPSの下落を伴って株価が下落していく可能性が高くなってきています。
実際、景気後退の確率は急激に上昇しています。実際に以下のTreasury spreadが低下を初めてから過去にはリセッションに陥っており目前に迫っています。
しばらくは米国株からは離れたほうが賢明だと筆者は考えています。実際に上記までの実績にはテスラ株の大暴落と円高が反映されていません。
以下はどのような環境でも利益を狙うことができるファンドについてまとめています。ご覧いただければと思います。
掲示板やネット上のグローバルAIファンドの口コミ
グローバルAIファンドの口コミをみてきましょう。過去の栄光もあるのでポジティブな意見もあります。
米国のAI株ファンドの基準価格が、5年で4倍になりました 「グローバルAIファンド」という商品です。 私は早い時期からAI株ファンドへ集中投資したので、かなりの利益が出ています。 AI株が伸びることは、誰にでも予測できたことですよね? あとは人より少しでも早く動き、先行投資することが大事
これは2021年9月2日時点のイケイケの時の感想ですね。
直近は元本から配当金を出す特別分配金となっていることを指摘されています。
うーん、グローバルAIファンドは特別分配金になってもうたから一旦バイバイ
以下はYahoo!ファイナンスの口コミです。
テスラほんとすごいな
組入比率下げてくれねえかな
テスラの暴落を見て悲痛の声が聞こえます。
僕もホルダーです、来年も下がりそうですが5年はもっときます。売ってしまうと買い戻せないので。
なぜ下がりそうなのに持つのでしょうか。テーマファンドの長期投資は非常に危険です。2021年末までは、30年来の米国金融政策(低金利政策)を背景に情報通信セクターの銘柄は上昇を続けました。長期にわたるバブルだったのです。
しかし、今後は同様の30年になるかというと、すでにGAFAMをはじめとした大型テック企業の成長が止まってしまったため、米国株式市場の強靭な足腰となる成長ドライバーがなくなってしまいました。次なる成長はどこかというと、米国株ではないと筆者は考えています。
つまり、5年待ったところで、グローバルAIファンドが大きく上昇するかというと、そんな期待は持たない方が良いと思います。期待で長期保有するのは、初心者に多いですが早く抜け出さなければならない悪癖です。
当初は期待させるだけさせといて…大損しています。大幅マイナスとなっていますが、焦って売ってしまうとマイナス確定。置いといて値上がりを期待するか迷いどころです。
酷いファンドだな
今日は1000円以上のマイナスか ため息ばっかり
奈落の底に落ちそう。
1年間で35%の下落、来年前半には…?
テスラの下落がすごすぎてダメダメですな
いったいどこまで下がるんでしょうか、売るに売れない
今日もテスラが、足を引っ張るのかな!いい加減、組み入れから外してくれんかな!
トータルリターンは1年で-30%。AIに対する認識や期待が大きく後退しているのか。これだけ下げが続くと残念ながら撤退せざるをえない。
悲観の声が多いですね。しかし、テーマファンドは景気サイクルを理解してタイミングよく投資していかなければならない高度な投資なのです。
特定のテーマに投資する投信のリスクを認識しよう
当ブログでは特定のテーマに関する投信を冒頭にもお伝えしたとおり複数取り上げてきました。
しかし、共通していえるのはブームに乗っている時は大きなリターンを得られるものの、ブームが過ぎ去ると大暴落するという傾向があるということです。
ブームというのは崩壊します。日本のバブルも崩壊しましたよね。テーマがブームにのると株価が過剰に反応して実態を大きく超えて上昇していきます。
しかし、いつか開いた乖離は是正される方向に動きます。
つまり、ブームが終わったら暴落してしまうのです。
残念ながらテーマ型投信は長期的な資産形成に向いている投資信託ではありません。
長期的な資産形成を行うのであれば、どの環境でも安定したリターンを狙える戦略で運用がなされている必要があります。
以下では筆者が投資しているファンドを含めて安定的に資産形成を行うのにてきしたファンドについてお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
まとめ
グローバルAIファンドについて纏めると以下となります。
- AI関連企業に投資
- 運用はアリアンツグループが担当
- 手数料は非常に高い
- 米国テクノロジー企業が9割AI企業の
- 売上は年率50%近い上昇が見込まれている
- コロナショックで業績と株価が躍進した
- しかし現在はバリュエーションが高い
- 米長期金利の上昇が警戒水準
- 今投資するのは非常に勇気がいるタイミング
もっと良い投資先はいくらでもあるので、考え直しましょう。