日本には有名なヘッジファンドはありません。一部では農林中金をヘッジファンドとみる向きもありますが、ひどいリターンとなっています。
今回はこの点については割愛します。
しかし、シンガポール籍ではありますが日本人のファンドマネジャーによって運用されている有名なヘッジファンドはあります。
それが今回紹介するBlack Cloverです。Black Cloverは坂本俊吾氏によって日本株アクティビスト戦略で運用されているヘッジファンドです。

アクティビストとは企業に投資して大株主になり経営陣に働きかけて資本政策や非効率な経営を改善させて能動的に株価を引き上げていく手法です。
今回はBlack Cloverの運用実績について、量保有報告書や企業のHP、EDINET、IR Bank、M&A Onlineなどの公式情報から取得して分析していきたいと思います。
Black Cloverの企業ごとの投資・売却履歴(更新)
以下はBlack Cloverの企業毎の投資実績です。もちろん、これらに掲載されていない取引ばかりではないと思いますが、公式情報として確認できるもののみを列挙したものが以下となります。
| 銘柄コード・企業名 | 投資時期と売却時期の概要 | 想定リターン (%) | 
|---|---|---|
| 9476 中央経済社  | 
2016年3月に初投資。 2024年5月に保有比率が5%未満となり投資終了。  | 
28.6% | 
| 5337 ダントーホールディングス  | 
2016年3月に初投資。 同年11月に全株売却。  | 
10.1% | 
| 1897 金下建設  | 
2017年11月に初投資。 2020年2月に全株売却。  | 
34.9% | 
| 7855 カーディナル  | 
2019年9月に初投資。 2021年10月に全株売却。  | 
145.0% | 
| 1782 常磐開発  | 
2020年11月に初投資。 2021年2月に全株売却。  | 
52.6% | 
| 1734 北弘電社  | 
2019年12月に初投資。 2023年3月に保有比率が5%未満となり投資終了。  | 
56.0% | 
| 7565 萬世電機  | 
2019年12月に初投資。 2024年11月に全株売却。  | 
159.2% | 
| 8138 三京化成  | 
2019年12月に初投資。 2025年2月に全株売却。  | 
168.0% | 
| 5918 瀧上工業  | 
2020年12月に初投資。 2025年2月に全株売却。  | 
49.7% | 
| 5923 高田機工  | 
2022年11月に初投資。 2025年2月に全株売却。  | 
27.3% | 
| 5921 川岸工業  | 
2022年11月に初投資。 2025年2月に全株売却。  | 
6.2% | 
| 1793 大本組  | 
2021年9月に初投資。 2025年2月に全株売却。  | 
53.8% | 
| 7305 新家工業  | 
2023年10月に初投資。 2025年2月に保有比率が5%未満となり投資終了。  | 
27.0% | 
| 1921 巴コーポレーション  | 
2024年1月に初投資。 2025年2月までにほぼ全株を売却(保有比率1.49%まで減少)。  | 
24.3% | 
| 6927 ヘリオス テクノ  | 
2024年6月に初投資。 2025年3月に保有比率が5%未満となり投資終了。  | 
-9.8% | 
注: 「全株売却」は大量保有報告書で保有割合が0%になったケースを指し、5%未満となった場合は実質的に投資を終了したことを意味します。また、想定リターンは初回取得時から売却時までの株価変動と累積配当を考慮したトータルリターンを示しています。
ヘリオステクノを除いて全てプラスで終えています。素晴らしいですね。
2025年2月から4月の下落を回避か!?年度ごとの新規投資銘柄と売却銘柄!
上記のような素晴らしい結果、Black Cloverは以下の通り右肩上がりの安定したリターンを叩き出しています。

年度毎の投資と売却履歴は以下の通りとなっています。
| 年度 | 新規投資銘柄 | 売却銘柄 | 
|---|---|---|
| 2012 | (なし) | (なし) | 
| 2013 | (なし) | (なし) | 
| 2014 | (なし) | (なし) | 
| 2015 | (なし) | (なし) | 
| 2016 | 9476 中央経済社 5337 ダントーホールディングス  | 
5337 ダントーホールディングス | 
| 2017 | 1897 金下建設 | なし(この年に売却完了した案件はありません) | 
| 2018 | (なし) | (なし) | 
| 2019 | 7855 カーディナル 7565 萬世電機 8138 三京化成 1734 北弘電社  | 
なし | 
| 2020 | 1782 常磐開発 5918 瀧上工業  | 
1897 金下建設(保有割合11.17%→0%、2020年2月に全株売却) | 
| 2021 | 1793 大本組 | 1782 常磐開発(12.29%→0%、2021年2月に全株売却) 7855 カーディナル(17.42%→0%、2021年10月に全株売却)  | 
| 2022 | 5923 高田機工 5921 川岸工業  | 
なし(保有継続案件のみ) | 
| 2023 | 7305 新家工業 | 1734 北弘電社(5.75%→4.75%、2023年3月に5%未満へ減少) | 
| 2024 | 1921 巴コーポレーション 6927 ヘリオス テクノ ホールディング  | 
7565 萬世電機(17.27%→0%、2024年11月に全株売却) 9476 中央経済社ホールディングス(5.52%→4.30%、2024年5月に5%未満へ減少)  | 
| 2025 (~3月) | (なし) | 8138 三京化成(想定リターン:+168%) 1793 大本組(+54%) 5918 瀧上工業(+50%) 5923 高田機工(+27%) 5921 川岸工業(+6%) 7305 新家工業(+27%) 1921 巴コーポレーション(+24%) 6927 ヘリオス テクノ ホールディング(-10%)  | 
注: 2025年に売却した銘柄については、各銘柄の想定リターン(カッコ内パーセンテージ)も記載しています。各想定リターンは株式分割等を調整の上、配当込みのトータルリターンを算出したものです。
そして、ここで注目して欲しいのが最後の2025年の実績です。
ご存知の通りトランプ大統領の関税ショックによって世界的に株価指数は大きく下落しています。米国のS&P500指数は20%以上も下落しています。

S&P500指数は高値から20%以上下落
しかし、Black Cloverは事前に危険を察知して売却をすすめ2025年3月末までの間に利確を行い被弾を完全に回避しています。
優秀なファンドマネージャーによる判断が正しかったことを裏付ける結果となっていますね。
優れた相場感とアクティビストとしての実績によって安定したリターンを積み上げていったということができるでしょう。

