今回は少し違う毛色の投信を取り上げたいと思います。
取り上げるのは高利回りで評判を博した「新光US-REITオープン」です。ギリシャ神話の最高神であるゼウスの愛称で親しまれています。
名前にもある通り「米国のリート」に投資をしている投信です。
筆者自身は現物の不動産投資は個人法人で粛々と実行していますが、リートに関しては手を出したことがありません。
景気ローテーションによってはリートは魅力的なタイミングがありますし最悪なタイミングがあります。
それも含め、今回は「新光US-REIT オープン:ゼウス投信」を分析していきたいと思います。
Contents
新光US-REIT オープン:ゼウス投信とはどのような投資信託なのか?
商品名が長いのでゼウスと呼びます。ゼウスの投資対象は米国に上場されている不動産投資信託です。
US-REIT銘柄を購入します。日本の不動産ではなく米国の不動産に投資するような感覚です。
そもそもリートとは何を指すのでしょうか?
REIT(リート)とは、投資者から集めた資金で不動産への投資を行い、そこから得られる賃貸料収入や不動産の売買益を原資として投資者に配当する商品で、一般的に「不動産投資信託」とよばれています。投資者は、REITを通じて間接的に様々な不動産のオーナーになり、不動産のプロによる運用の成果を享受することができます。
投資信託は投資家から集めたお金で株や債券などを買うイメージが強いですが、不動産も買うということです。
オフィスや賃貸住宅、商業施設など不動産を買って賃貸収入、売買でキャピタルゲインを獲得し、投資家に還元していきます。
繰り返しにはなりますが、ゼウスはアメリカのリートを複数分散で買い、リターンを獲得する投信ということです。
以下は1987年から米国株と米国REITの値動きの比較です。
一時的に株式が高騰する局面もありますが、基本的には同様の動きとなっています。ただ、直近では株式のリターンの方が大きくなっています。
ただ、上記は配当金を税金を差し引かれる前の状態で投資した場合のリターンとなります。
REITはほとんどを配当に出してしまうので、差し引かれる税金が非常に大きく複利の毀損も著しくなります。
超長期でみると株の圧勝ということになるでしょう。
ゼウスの運用会社はアセットマネジメントOneが実施します。
アセットマネジメントOneはたわらノーロードなど有名なインデックスファンドを展開しているところですね。
アセットマネジメントONEの前身はDIAMアセットマネジメントです。DIAMはよく新興国投信で聞く名前ですね。
USリートを運用するにあたり、運用助言をおこなっているのはインベスコ・アドバイザー・インクです。
同社は1.5兆ドルの運用資産を有する世界的な独立運用会社の一つであるインベスコ・リミテッドの一員となっています。
不動産部門は米国テキサス州ダラスに本拠を置いているとのことです。
分配方針と組入銘柄
リートといえば、99.9%の投資家が配当を期待して投資をすると思います。
分配は原則として毎月5日の決算時に行うとのこと。毎月お小遣いが貰えるわけですね。
分配金は以下に基づき実行されます。あとでお伝えしますが、基本的にはBかCの特別分配金が支払われるケースが多くなっています。
2024年4月末時点の組み入れ銘柄は以下の通りです。
一銘柄あたりの比率が大きくなっていますね。上位10銘柄で58.8%となっています。各セクターの構成比率は以下の通りバランス型となっています。
ちなみに過去の構成上位銘柄は以下となります。アメリカンタワーやウェルタワーは常に上位にいますね。
昨年の推移からみるとPROLOGISは利確したみたいですね。
2024年4月末 | 2024年1月 | 2023年11月 | 2023年7月 | 2023年4月 | 2022年12月 | 2022年7月 | |
1 | AMERICAN TOWER CORP | AMERICAN TOWER CORP | AMERICAN TOWER CORP | PROLOGIS INC | PROLOGIS INC | PROLOGIS INC | AMERICAN TOWER CORP |
2 | WELLTOWER | WELLTOWER | WELLTOWER | AMERICAN TOWER CORP | AMERICAN TOWER CORP | AMERICAN TOWER CORP | PROLOGIS INC |
3 | EXTRA SPACE STORAGE INC. | UDR INC | VICI PROPERTIES | REALTY INCOME CORP | REALTY INCOME CORP | CROWN CASTLE | SBA COMMUNICATIONS |
4 | EQUINIX INC | EXTRA SPACE STORAGE INC. | DIGITAL REALITY TRUST INC | WELLTOWER | WELLTOWER | DIGITAL REALITY TRUST INC | INVITATION HOMES INC |
5 | REALTY INCOME CORP | DIGITAL REALITY TRUST INC | REALTY INCOME CORP | UDR INC | VICI PROPERTIES | REALTY INCOME CORP | WELLTOWER |
6 | HOST HOTEL & RESORTS | REALTY INCOME CORP | SBA XOMMUNICATIONS CORP | AVALONBAY COMMUNITIES | UDR INC | VICI PROPERTIES | AVALONBAY COMMUNITIES INC |
7 | CAMDEN PROPERTY | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC | SUN COMMUNITIES | VICI PROPERTIES | AVALONBAY COMMUNITIES | HEAL THPEAK PROPERTIES INC | VICI PROPERTIES |
8 | ALEXANDRIA REAL ESTATE EQUIT | SBA XOMMUNICATIONS CORP | PROLOGIS INC | DIGITAL REALITY TRUST INC | SUN COMMUNITIES | SUN COMMUNITIES INC | EQUINIX INC |
9 | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC | ALEXANDRIA REAL ESTATE EQUIT | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC | SUN COMMUNITIES | HEALTHPEAK PROPERTIES | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC | UDR INC |
10 | DIGITAL REALITY TRUST INC | VICI PROPERTIES | HEALTHPEAK PROPERTIES | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC | INVITATION HOMES INC | CROWN CASTLE |
ゼウス投信の運用実績とは?分配金再投資基準価額は幻!?
実績を見ていきましょう。まず基準価額ですが、純資産額がコロナショック後から回復していないことがわかります。分配再投資基準価額は上昇しています。
ただ、上記は気をつけなければいけない点があります。それは青色の分配金再投資基準価額は実現不可能だということです。
分配金を出した瞬間に20.315%の税金が差し引かれますし、再投資する場合は更に購入手数料も新たに追加で徴収されるからです。
特にゼウス投信のように配当金の比率が大きい投信については大きくリターンが毀損します。
再投資を選べば複利効果を得られますが、結局はそのリターンもインデックスファンドを下回りますので、妙味は低いですね。
2004年からファンド設定されて19年で年率は3%となっています。3%で良いわけがありません。
直近の運用実績は以下です。
(これも配当金の税前での再投資前提です)どうしても、不動産ですから景気に敏感で、下落は免れずリターンが低くなってしまいますね。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
2023年 | -0.55% | 9.86% | -5.40% | 11.75% | 15.50% |
2022年 | 1.52% | -4.08% | -6.92% | -4.25% | -13.22% |
2021年 | 18.38% | 11.26% | 2.68% | 15.77% | 56.57% |
2020年 | -21.95% | 7.74% | -0.75% | 0.90% | -15.79% |
2019年 | 17.34% | -2.00% | 7.24% | 0.84% | 24.34% |
2018年 | -11.51% | 10.50% | 1.54% | -8.00% | -8.66% |
2017年 | -2.06% | 1.32% | 0.68% | 2.65% | 2.55% |
やはり資産を伸ばすには、下落局面を最低でも浅い傷で回避し、リターンを積み重ねていく必要があります。
ゼウスの場合は投資先が不動産ということで、それはどうしても避けられません。
もっと柔軟に下落相場でもリターンを狙っていけるファンドを選択する必要があります。
不動産投資で大きなリターンを期待できる投資とは?
労力をかけずに不動産投資を行う手段としてリートは一般的になってきています。
しかし、筆者としてはリートへの投資はおすすめできません。理由はリートは賃料収入を大きな収入の柱としているからです。
賃料は高くても5%程度しか見込めず、大きなリターンを獲得するためには適していません。
不動産の最大の魅力は情報格差を利用した売買で大きなリターンを獲得できることです。
安い物件を買って高く販売することで30%-50%のリターンを獲得することが可能です。
つまり売買を高速で回すことで大きなリターンを獲得することが可能となるのです。
ただし、上記のような投資は代々親族が不動産業を営んでおり、資金も潤沢にあり不動産仲介業者などのネットワークもバッチリ持っているなど、相当に参入障壁が高くなっています。
インフレが加速する時代に、不動産投資も行いたいところですが、やはりメインはどう足掻いても株式投資になるかと思われます。株式投資の弱点は相場の暴落で大ダメージを受けてしまうリスクですが、そのリスクを抑え込み、堅実にリターンを長年叩き出しているヘッジファンドも存在します。
筆者の場合は、BMキャピタルに運用を任せ10年以上が経過しており、理想的なリターンを得ています。BMキャピタルの詳細に関してはこちらを参考にしてください。
配当金が下がっている?高配当利回りの裏に隠れた特別分配金のリスクに気をつけよう!
ゼウス投信に投資をした方の主な理由は配当利回りの高さではないでしょうか?最初は100円近い配当金がありましたが、現在は毎月25円の配当金となっています。
確かに絶対値としては減少していますが配当利回りは変わらず10%以上を維持しています。つまり、基準価額が下落しているのです。
先ほどの図をご覧ください。ゼウス投信の基準価額は一貫して下落をつづけており現在では1700円となっています。
配当金を月額25円、つまり年間300円の配当金を考えると配当利回りは17%という高水準となります。
しかし、最初は10,000円だった基準価額が約6分の1まで下がっているのは全く健全ではありません。
通常は得られた運用リターンの中から配当金を出します。このような状態では基準価額は10,000円を下回ることはありません。
最初に投資していた方からすると投資資金ベースでの配当利回りは4.26%となっています。
そもそも、基準価額が10,000円を下回り下落し続けるということは運用リターン以上の配当を出していることになります。
つまり、元本から配当を出す特別分配金を拠出しているということになります。
特別分配金を出しているということは投資家からとっては好ましくありません。
購入手数料3.3%と信託手数料年率1.683%を支払って、元本が引き出されているということになります。
つまり、手数料が発生する普通預金をしているという状態になっているのです。
配当金が出されるので満足していたら、解約したら元本が5分の1になっているという悲惨な事態になるのです。
ゼウス投信のように高すぎる配当利回りを謳っている投信は避けた方がよいでしょう。
2024年以降の今後のUSリートの見通しとは?商業用不動産が危ない!?
ゼウス投信は米国リートに投資をしているので米国リートの今後の見通しが重要になってきます。
冒頭でリートは投資するにふさわしい時期と最悪な時期があるとお伝えしましたが、上記リターンはまさにそれを表しています。
2020年の後半から2021年末まで、不動産投資するのにとても良い時期でした。
もしそれまでに不動産を保有していたのであれば、大きく収益を伸ばせる時期でした。
2020年の前半はコロナショックによるオフィスビルなどの賃貸収入が減少したことが想像できます。しかし、異次元金融緩和による超低金利政策が実施されました。超低金利で資金を調達し人々は不動産を買いました。
アベノミクス以降の金融緩和で日本の不動産価格が上がり続けていることからもわかる通り、低金利で不動産価格は上昇していくのは世界共通なのです。
2020年から2021年までリートの成績が良いのも頷けます。しかし、時は経ち、2022年以降、この異次元金融緩和の巻き戻しが起こっています。
理由は米国をはじめとした世界中で1970年代以来の高いインフレが続いていますよね。
米国の中央銀行であるFRBはインフレに対応するために利上げを実施しています。
結果として政策金利は現在5.50%まで急激に上昇しています。既に2018年の最高到達地点を優に越えてきています。
通常の3倍の速度で利上げを行う0.75%ずつの利上げも行なっていました。
結果として不動産投資を行う際に重要な30年の固定金利も以下の通り急激に利回りが上昇していきました。
2023年10月にはは7.5%を超えるレベルまで急騰していきました。
結果として2022年以降、米国の不動産価格は以下の通り大きく下落していきました。
赤:米国REIT指数
青:米国株式
米国株式が10%下落しているのに対して、米国REITは約30%下落しています。
しかし、不動産市場は現在も大きな問題を内方しており、ショックをもたらす震源地とささやかれています。
2023年3月、欧州では金融大手のクレディ・スイスが経営危機に陥り、同じく金融大手のUBSに救済買収された。また、米国では中堅銀行の破綻が立て続けに複数件発生した。4月中旬現在、世界の金融市場はひとまず落ち着きを取り戻している。ただ、危機的な状況がすべて去ったと判断するのはやや尚早だろう。米国の中堅銀行の経営不安はまだくすぶっている。加えて、一部の大手ファンドが厳しい状況に追い込まれつつあるとの見方もある。
それは、新型コロナウイルス感染拡大による「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。
参照:ダイアモンド
高金利に加えて、働き方の変化で商業用の不動産の価値が大幅に低下した結果、不動産ファンドが解約対応ができないという状況に陥っているのです。
これらのファンドが解約対応や流動性の確保のために保有する債券や株式を売却していくことで世界全体としてリスクオフになると見込まれているのです。
正直言って米国のリートに投資するのは暫く控えたほうがよいでしょう。
まとめ
本当は配当利回りなども細かく見たいと思っていましたが、景気サイクル的にリートは今はだめです。
さらに2024年8月時点で、次の危機の震源地になると目されています。筆者としてはゼウス投信はおすすめすることはできません。
今回途中で紹介したBMキャピタルのように下落耐性など強みを活かした投資を実践している投資先に投資を行い安定して資産を増やしていくのが賢明です。
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